

健康のことを話したいのに「自分は大丈夫」と耳を貸さないお父さん。
そんなガンコなお父さんを説得させるためにはコツがあります。
ぜひ活用してみてください。


監修・黒川伊保子



ヒトの脳には、とっさに使う思考回路が2つあります。
ヒトの脳には、とっさに使う思考回路が2つあります。
一つは「共感と気づき」の回路、もう一つは「空間認知と問題解決」の回路です。たとえば、「腰が痛くて」と言うと、前者の回路を使う人は「かわいそうに。腰が痛いのは、ほんとつらいよね」と返し、後者の回路を使う人は「医者に行ったのか」と返します。
誰もがどちらも持っていますが、優先して多めに使う側があります。そして、父(特に50代以上のお父さんに多いと思われる)である人の多くが、「空間認知と問題解決」の回路を圧倒的に優先して使っているのです。
父を理解するとき、この男性脳の尊き本能を知っておく必要があります。
お父さんたちの無骨な口の利き方を、まずは許してあげてほしい。そして、父である人も、共感型の対話ができたら、家族の人気度ががぜん上がるのを知ってほしいと思います。

ムカつく言葉を
許そう
男性は何万年も狩りをしてきたので、とっさに距離を測ったり、相手の動きを読んで自分の身のこなしを決することができないと生きて帰れない。このため、空間認知と問題解決の回路を優先して使うように進化してきたのです。そして、守らなければいけない相手ができると、よりいっそう、この回路を強く使うことになります。
つまり、世のお父さんたちが、「ありがとう」も「美味しい」も言わないくせに、口を開けば「宿題やったのか」「まだ結婚しないのか」なんて刺してくるのは、大切な家族を守ろうとする、脳の本能的な反射行動なのです。
父のトリセツの筆頭は、父たちのムカつく「欠点指摘癖」を許して、やんわりとやりすごしてあげること。余計なことを言われたときは、「いつも、気にしてくれて、ありがとうね」が便利です。



笑顔を
あげよう
男性脳は、狩りの現場=仕事場では、笑顔を失いがち。空間認知と問題解決の回路を使うとき、表情はニュートラルになるからです。その癖が抜けないまま家に帰り、仏頂面のままご飯を食べる男性もたくさんいます。このため、家族も、なんとなく父親には、硬い表情で接しがち。実は、これが悪循環を生んでいるのです。
私たちの脳には、ミラーニューロン(鏡の脳細胞)と呼ばれる脳神経細胞が入っていて、無意識のうちに、目の前の人の表情を鏡に映すように移しとる癖があります。つまり笑顔の人の前では、人は笑顔になるもの。そして、笑顔になると、なんと共感型の回路が起動するのです。問題解決型の父親の脳を共感型に変えれば、対話もしやすくなり、話も通じます。
帰ってきたお父さんを笑顔で迎えましょう。久しぶりに会うときも、満面の笑みで。



説得するときは、
リスクを明確に
父親に何かさせようと思ったら、「〇〇してよ」ではなくて、「〇〇しなかったときのリスク」を明確にしなければなりません。問題解決型の回路を使う脳は、リスク回避が行動の第一モチベーションだからです。
たとえば、かたくなに便座を下げない父親を説得するのなら、リスクで説得するのが一番。「便座を上げずに立ちションしてしまったときと、上げっぱなしの便座に気づかず、うっかり腰を下ろしてしまったときの悲惨さはまったく違う。腰を痛めてしまって、歩けなくなった人もいる。妻をそんな危険な目に合わせるの?リスクヘッジの観点から、便座は毎回下ろす規約にします」と宣言すると、リスクヘッジにこだわる男性脳はぐうの音も出ません。



黒川伊保子
株式会社感性リサーチ代表取締役、人工知能研究者、エッセイスト、日本ネーミング協会理事。1983年、奈良女子大学理学部物理学科卒。
人工知能エンジニアを経て、感性の研究者に。2003年、株式会社感性リサーチを設立。語感の潜在脳効果の数値化に成功、マーケティング分析の新手法を拓く。男女脳の発見から編み出したコミュニケーション論で人事教育にも新境地を提供。
著書では、『妻のトリセツ』(講談社新書)をはじめとしたトリセツシリーズが人気を博し、近著に『職場のトリセツ』『夫婦のトリセツ決定版』『60歳のトリセツ』。
公式サイト http://www.ihoko.com/
3つの「トリセツ」を
チェック
家族で話そう、帯状疱疹。
ふだんは頑固なお父さんも、3つの「トリセツ」をおさえると、話をきいてくれるかもしれません。
例えば、身近にある疾患なのに意外と知られていない、「帯状疱疹」の話。
帯状疱疹は、50歳代から発症率が高くなり、
80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症する*1
といわれています。
発症すると、体の片側の一部にピリピリとした痛みと共に赤い発疹が現れることも。
帯状疱疹や、その予防について、いちど家族で話し合ってみませんか。

*1 Shiraki K. et al.: Open Forum Infect Dis. 4(1), ofx007, 2017
※帯状疱疹について詳しくは医師にご相談ください。
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